期限の利益の喪失
さて、今日は「期限の利益」について解説させていただきます。「期限の利益」と言ってもあまり聞きなれない言葉かもしれませんね。これは、住宅ローンを組む際に金融機関と締結する金銭消費貸借契約の期間中、債務者が各期日までに決められた金額をちゃんと返済することで、「残りの借入金額は、期日が到来するまで返済する必要がない」という民法上の定めで、お金を借りた債務者にとって当然の利益となる権利のことです。
しかし、金銭消費貸借契約書には必ず「期限の利益の喪失」という内容が記載されています。小さい字で…。もし万が一、債務者が住宅ローンの滞納や自己破産などの法的手続きを行った場合、債務者にいつまでも分割の支払いの利益を与える必要はないと債権者は考えます。これ以上待っても支払いができないと債権者が判断することで、期限の利益は喪失されるのです。つまり、分割払いができなくなります。ということは、債務者は期限の利益を失うことにより、残っている住宅ローンの残債務の全額を債権者に一括して返済しなければならないということになります。
住宅ローンを1、2ヶ月滞納すると催告書や督促状が届きます。それを無視してそのまま滞納を続けていると、今度は「期限の利益の喪失」を通知する書類が送付されてきます。期限の利益の喪失までに至るまでの期間についてですが、たとえば住宅金融支援機構の場合、住宅ローン初回滞納時から6ヶ月以上となっています。ですが、債権者によっては3ヶ月以上の場合で通知が届くこともあります。なお、債務者が自己破産を申し立てた時には、債権者は期間の猶予を認めることなく、直ちに期限の利益の喪失を通知します。また債権者の中には、債務者の状況に応じて所定の期間を経ずに代位弁済の時期を繰り上げてくる金融機関もあるので注意が必要です。
住宅ローンを滞納してしまったら、すぐに銀行が家を取りに来る、すぐに競売になってしまうと思っている方も大勢いらっしゃいます。しかし、もちろん、すぐに銀行が取りにくることもなければすぐに競売になることもありません。順序に沿って手続きを進めてまいりますので、ある程度の期間があります。住宅ローンの支払いに不安がある方は、早め早めの相談をお薦めします。期間は長ければ長いほど、競売を回避できる可能性が高いからです。そして、有利な条件で再出発できます。これまでも競売回避できた多くの方の共通点は「相談された時期が早い」ということです。どんな些細なことでも構いませんので、少しでも不安のある方はお気軽にご相談ください。
関連した記事を読む
- 2024/08/29
- 2024/08/29
- 2024/08/20
- 2024/08/06